母の人生から学んだこと――家族の苦労と相続という現実

私の母の人生を振り返ると、そこには農家での厳しい子供時代、期待とは違った結婚生活、そして思いもよらない裁判沙汰まで、波乱に満ちた道のりがありました。50代も半ばを過ぎた今、母のたどってきた道を冷静に見つめ直すことで、私自身が学んだことを書き留めておきたいと思います。

母の生い立ちと結婚、そしてバブルの光と影

母は日本海側の県の出身で、4人姉妹の長女として育ちました。実家はお米を作る農家で、決して裕福ではありませんでした。祖母は本当に働き者でしたが、祖父はそうではなかったようです。農家の収入で6人を養うのは大変なことで、母は若いうちから都会に出て働き、収入を実家に仕送りしていたと聞いています。

都会で父と出会い、母は豊かな暮らしを夢見て結婚しました。関西の片田舎に住むことになったのですが、「父に騙された」と母はよく話していました。不自由な暮らしはさせないという父の言葉に心を引かれたものの、現実は期待とはかけ離れていて、姑や小姑との折り合いも悪かったようです。

父は中卒で、叔父とともにビジネスを立ち上げたばかりでした。会社は父方の実家の土地を利用しており、父は重役として働いていました。バブルの時代には受注も多く、母も実家にお金を送ったり、少し見栄を張ったりしていたようです。私もこのころ、よく焼肉に連れていってもらった記憶があります。

けれどもバブルが弾けた後、状況は一変しました。父が会社を辞める前に集団訴訟が起こり、なんと20年近くもの間、民事訴訟に巻き込まれていたのです。このことを家族が知ったのは、父が体を悪くして入院している間に部屋を片付けていたとき、偶然関係書類を見つけたことがきっかけでした。訴訟は父の死後も続き、母も裁判に関わることになりました。裁判所への出廷こそありませんでしたが、敗訴した場合の賠償額が大きく、心配が絶えない日々でした。最終的には原告団の高齢化を理由に裁判は終了しましたが、長い間家族の上に重くのしかかっていた問題でした。

相続問題がこじらせた親戚関係

母の実家をめぐる問題も、年月とともに深刻になっていきました。月日が経ち、母の実家は空き家になりました。屋根に穴が開いて獣が入り込んだり、瓦が飛んで近所から苦情が来たりしていましたが、母は何も対応せず、問題を先延ばしにしてしまっていました。

実家の管理は叔母の家族が担ってくれていたのですが、母はその苦労に対して十分な感謝の気持ちを示さなかったようです。母の妹のうち2人はすでに亡くなっており、それぞれ結婚してお子さんもいました。親戚づきあいを続けていたのは叔母だけだったこともあり、相続の問題は複雑になっていました。

私自身、相続を前に進めるために調査を行いました。その過程で、亡くなった母の妹が実家を担保にお金を借りてリフォームしていたことがわかりました。返済は済んでいたようですが、抵当権が抹消されないままになっていたのです。

たった1軒の家を更地にして売却する、それだけの話し合いだったはずでした。私は母とともに母の地元へ出向き、関係者との話し合いを試みました。ところが、母を間にはさむと人間関係がどんどん悪化していくのです。叔母は母との話し合いの後に激怒し、私とも音信不通になってしまいました。母は「こんなに揉める理由がわからない」と言いましたが、私の目には、母が自分の体面を守るために都合の悪い話を一切していないように映りました。それどころか、叔母の私に対する印象まで悪くなってしまい、どうすればここまで関係をこじらせられるのかと、正直なところ途方に暮れました。

子どもの人生は親のためにあるのではない

この経験を通じて、私は一つの現実を突きつけられました。親だからといって、必ずしも子どもの幸せを優先してくれるわけではないということです。母自身が「子どもは親を助けるもの」と育てられてきたからこそ、私にも同じことを求めてくる部分がありました。もし私に十分な財力があれば、経済的に助けることもできたかもしれません。でも、仕事を辞めて実家に戻るとなれば、その先の私は何のために生きているのかわからなくなっていたでしょう。

50年以上生きてきて思うのは、家族や親戚であっても、土地の相続が絡むとコミュニケーションは驚くほど難しくなるということです。たとえ20年以上関係を保ってきた相手であっても、です。この経験から強く感じたのは、相続の問題は当事者が元気なうちに、できるだけ早く適切に進めておく必要があるということでした。

皆さんのご家庭では、相続やご実家のことについて、ご家族と話し合われていますか。「まだ先のこと」と思っているうちに、気づけば取り返しのつかない溝ができてしまうこともあります。もし少しでも心当たりがあるなら、今のうちに一歩踏み出してみることが大切なのかもしれません。この記事が、どなたかの参考になれば幸いです。

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