人生も後半に差しかかると、「住まい」について改めて考える機会が増えるものです。賃貸と持ち家、どちらが正解かという議論は尽きませんが、私たち夫婦はつい最近、思い切って家を買い直すという大きな決断をしました。今日はその経緯と、住み替えてみて感じたことを書いてみたいと思います。
広すぎる家を持て余して気づいたこと
以前住んでいたマンションは、3LDKに納戸まで付いた専有面積73平米の広々とした物件でした。日当たりも風通しも良く、カラオケルームやシアタールームといった共有施設まで充実していて、本当に素敵な家だったのです。私自身はできることならずっと住み続けたいと思っていました。
けれども、子どもがいない夫婦二人暮らしでは、どう頑張っても部屋を使い切ることができませんでした。一部屋はいつも空いたまま。管理費は月額約2万4千円。せっかくの共有施設も、結局一度も利用しないまま。正直なところ、持て余していたのです。
そんな折、試しに売却査定をしてみたところ、思いのほか良い結果が出ました。ありがたいことに、購入時よりも価値が上がっていたのです。「売れたら引っ越し先を考えよう。売れなかったとしても気に入っている家だから構わない」——そんな気楽な気持ちで売りに出すことにしました。
実は売却を考える前から、将来の資産形成について夫婦で話し合おうとはしていました。でも、夫は住宅ローンの返済に精一杯で、なかなか前向きな議論ができない状況だったのです。私は一人で考えを巡らせました。もし希望の価格で家が売れれば、賃貸に切り替えて余剰資金を投資に回し、配当金で家賃の大部分を賄える計算が成り立つことに気づいたのです。しかし、夫はどうしても持ち家に住みたいと譲りません。夫婦で意見が割れるのは、住まいに関してはよくあることかもしれませんね。
手数料は少々高かったものの、より高く売ってくれそうな不動産会社と契約しました。そして半年ほど経った頃、買い手が突然現れました。「この方を逃したら、しばらくチャンスはないだろう」——そう直感して、売却を決めました。
理想と現実のあいだで見つけた「ちょうどいい家」
住み替え先を探すにあたって、私にはひとつ譲れない条件がありました。この地域から離れたくなかったのです。長年暮らしてきた街への愛着というのは、この年齢になって初めてしみじみと感じるものなのかもしれません。気に入った土地に住む喜びが、年齢とともにじわじわと大きくなっていくのを実感しています。
住みたいエリアで希望価格帯の物件がどれくらいあるのか、じっくり調べることから始めました。しかし、物件探しは想像以上に難航しました。手頃な価格だと思った物件が事故物件だったり、良いなと思った瞬間にもう売れていたり。最初はリノベーション可能な物件を探していたのですが、リノベーション費用が予想以上に高額なこと、エレベーターのない最上階は将来の身体のことを考えると現実的ではないことなど、理想と現実のギャップに何度もぶつかりました。
最終的に出会ったのは、同じ最寄り駅の反対側にある築40年近い2LDKの物件でした。駅前で、目の前には大きな公園が広がっています。偶然散歩中に見つけたマンションがタイミングよく売りに出ていると知ったときは、運命のようなものを感じました。スケルトン工事の際にひび割れが見つかったという情報もありましたが、幸い水漏れはなかったとのこと。予算はオーバーしましたが、値引きがあったこと、将来のリセールバリューも期待できることを考え合わせて、購入を決断しました。
予算オーバー分は新たに住宅ローンを組んでカバーすることにしました。最初は夫が手続きを進めていたのですが、シミュレーションしてみると私が契約した方が有利な条件で借りられることがわかり、臨機応変に私が手続きを引き受けました。この年齢で住宅ローンを組むことになるとは思ってもいませんでしたが、ありがたいことに非常に良い条件で借りることができました。
暮らしをコンパクトにしたら、心もお金も軽くなった
住み替えにかかった期間は、なんとたったの1か月。売ってから買ったにもかかわらず、この短期間で完了したのは自分でも驚きです。
そして、住み替えの効果は目に見えて現れました。順調に仕事を続ければ定年までにローンを完済できる見通しが立ち、返済期間は以前より12年も短縮。毎月の返済額は6万円下がりました。年間のキャッシュフローは少なくとも50万円の改善です。お金の心配が小さくなったことで夫の表情が明るくなり、今ではなんと夫まで投資を始めたのです。これには本当に驚きました。
今の家は48平米。以前に比べれば小さな家ですが、必要なものがすべて手の届く距離にある暮らしは、想像以上に快適です。休みには目の前の公園を散歩できますし、掃除もあっという間に終わります。本当にやってよかった。もっと早く決断していてもよかったかもしれない、と今では思っています。
暮らしをダウンサイズするというのは、何かを失うことではなく、本当に大切なものを選び取ることなのだと、この歳になってようやく実感しています。皆さんは今の住まいに、どんな思いを抱いていらっしゃいますか。もし「なんとなく合わなくなってきたな」と感じているなら、暮らしの棚卸しをしてみるのも、案外良いきっかけになるかもしれませんよ。


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