夫と一緒に生活を始めた頃、彼には学生時代の奨学金の返済が残っていました。当初、夫は「低い金利だし、返済額も少ないから問題ない」と言っていました。けれど私は、まず貯金を増やすためにも借金を早く片付けるべきだと考えていました。
夫は私の意見にまったく耳を貸そうとせず、「毎月の節約をしながら、残ったお金を貯金に回せばいい」と主張していました。お金に対する考え方が、根本から違っていたのです。
「どうしたら貯金できるか」を本気で考え始めたきっかけ
私は貯金に関する本を何冊か読み、どうすれば1000万円を貯められるのかを真剣に考えるようになりました。そのとき、ふと子供の頃のことを思い出しました。
母はいつも「お金がない」と口にしていました。幼い私が「いくらあれば足りるの?」と尋ねると、母は「100万円くらいかな」と答えました。当時の私のお小遣いは月々3000円ほど。100万円なんて途方もない金額に思えて、貯めるには気の遠くなるような時間が必要だと感じたものです。
あの頃のお金に対する漠然とした不安が、大人になっても心のどこかにずっと残っていたのだと思います。だからこそ、借金を抱えたまま「なんとかなるだろう」と楽観する夫の姿勢が、どうしても受け入れられませんでした。
そこで私は夫にこう提案しました。「家計全般の支出は私が負担するから、あなたは自分の給料のほとんどを借金の返済に充ててほしい」と。夫はしぶしぶ従ってくれましたが、遊ぶお金がなくなったことでずいぶん文句を言われました。正直なところ、「受け入れてくれないなら別れる」くらいの強い気持ちで臨んでいました。それほど、私にとってお金の問題は譲れないものだったのです。
かなりの不満を聞かされましたが、結果として借金の返済は2年で完了しました。そしてそのあと、私たちはマンションを購入することができたのです。
借金があるとお金が貯まらない本当の理由
これまでの経験を振り返って気づいたことがあります。人間というのは、借金を抱えていると貯金や投資になかなか踏み出せないものです。そして「自分の努力で返済しているのだから、少しくらいは報われてもいいはず」という気持ちが生まれ、ついつい小さな出費を繰り返してしまいます。
借金はストレスの原因になります。そのストレスを散財で発散してしまうという悪循環に陥ると、資産を作るという本質がどんどん歪んでいくのです。
聞けば、夫の実家もお金を借りることが日常だったようです。夫の父親が亡くなったことで家計はさらに苦しくなり、義母の借金は膨らんだようです。私の実家も贅沢が板に着いてしまい無心をされた時がありました。正直に言えば、親にお金を貸す気持ちにはなれませんでした。
私が上京して一人暮らしをする話をしたとき、夫が「自分も実家を出て一緒に住む」と言い出したのは、もしかしたら経済的な不安から脱却したかったからなのかもしれません。50歳を過ぎた今だからこそ、あの頃の夫の気持ちも少しわかるような気がしています。
お金の話を避けることは、将来に目をつむること
節約と返済の日々を振り返ると、お金の価値を正面から考え、借金返済に本気で取り組んだからこそ、少しずつ暮らしが報われるようになったのだと実感します。
あの頃購入したマンションは、のちに売却して利益を生み出しました。この利益が、今の生活に余裕をもたらしてくれています。もちろん、マンション売却の際にも夫からはさんざん文句を言われました。けれど、お金の話が合わないということは、将来の設計図を一緒に描けないということです。たとえ結果的にうまくいったとしても、お金の話題を避けて通ることは、将来に目をつむることと同じだと私は思っています。
資産を生まない借金は、ただの借金です。返済を最優先にしたあの判断は、今振り返っても間違いではなかったと確信しています。お金に対する意識を変え、節約の大切さを身をもって学んだあの経験は、人生の中でもかけがえのない財産になりました。
みなさんは、パートナーとお金の話をきちんとできていますか。もし意見が食い違ったとき、どこまで本気でぶつかり合えるでしょうか。お金の話は気まずいものですが、避けずに向き合ったその先にこそ、安心できる未来があるのかもしれません。

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