50代になると、親との同居について向き合わなければならない場面が増えてきます。親も高齢になり、片方が亡くなったあとの一人暮らしへの不安、健康面や経済的な心配……。正直気は進まないけど「一緒に住んだほうがいいのではないか」と悩まれている方も多いのではないでしょうか。
でも、親と同居しないこと、あるいは一度同居したあとにそれを解消する選択は、決して親不孝ではありません。今日は、私自身の経験を交えながら、そのことについて書いてみたいと思います。
自立心のない親と向き合うということ
親御さんが自立心旺盛で、自分の時間を楽しめる方であれば、同居はうまくいくこともあるかもしれません。趣味に没頭したり、新しい土地で友人を作ったり、自分なりの楽しみを見つけて充実した毎日を送れる方もいらっしゃいます。
けれど、家族の中に強い依存関係があり、常に向き合うことを求められる場合は話が違ってきます。「親であること」を実感し続けたい親の場合、子ども側の負担は想像以上に大きくなります。地方と都会での人間関係の違いが、感覚のズレとなって表れることもあるでしょう。
私自身も一時期、母親と同居していたことがあります。地元を離れたがっていた母を迎え入れたのですが、ものの半年もたたないうちに「やっぱり地元に戻りたい」と言い出しました。実家を他人に売ってしまった後にです。結果的に、私たちとの暮らしや関係が母にとっても辛いものになっていたようで、そのうち母は妹と相談して引っ越しを手配を進め、全部自分でやるからと言って妹の自宅の近くで一人暮らしを再開しました。
来るときはあんなに地元を離れたがっていたのに……。実家を売り払わなくてもお試しでくる選択も話していたのに。人の心変わりというのは、本当にわからないものですね。
私自身、社会人になった頃に物理的に親と離れて暮らすことを望んで都会へ出てきました。それから20年以上が経ち、自分も大人になったのだから、今度はうまくやれるだろうと期待していた部分がありました。でも、その期待は見事に木っ端みじんに砕かれたのです。
同居しないことは親不孝ではない
親と一緒に住んでいる間、親はやはり上からものを言いますし、干渉やストレスが絶えませんでした。自宅は本来、自分が安らぐための場所のはずなのに、まったくくつろげない。仕事も忙しい時期と重なり、ストレスがたまって体の健康にまで悪影響が出てしまいました。
結果として、母と再度離れて暮らす選択をしたことは正しかったと感じています。「もう親と関わらなくていいんだ」と思ったとき、ふわっとさわやかな気持ちが胸に広がったのを今でもはっきり覚えています。
親子関係にはさまざまな形があります。一緒に住むことだけが親孝行ではありません。離れて暮らすことが、親を尊重しながらも自分自身をすり減らさない方法になることだってあるのです。
同じ悩みを抱える方へ伝えたいこと
これから親との同居を考えている方、あるいは今まさに同居していてあるべき姿と正直な自分の気持ちの乖離にストレスを感じて辛い思いをしている方に、私の経験からいくつかお伝えしたいことがあります。
まず、自分が働いているかどうかに関わらず、親の面倒を完全に見ることは現実的に難しいです。それに親御さんの自立を促すことは、決して冷たいことではありません。いずれ一人暮らしになる将来はいつかくることはわかっていたのだから。親が一人でも充実した日々を送れるよう、趣味や新しい人間関係を作る機会をそっと後押ししてあげてください。もちろん、それは親御さん自身が望む場合の話です。新しい関係を作ることに躊躇されるなら、今ある人間関係を大切にすることを勧めるのも一つの方法です。実家を販売してしまうことは新しい生活に馴染んでからの方が良いでしょう。
そして、一方的に濃い家族関係を求められてストレスになっているなら、再び離れて暮らすことも立派な選択肢です。ご兄弟があるならもう頼ってもいいのではないでしょうか。いざ同居してみてうまくいかなかった場合、一人暮らしに戻ることが親御さん自身の心の平穏につながることだってあります。一人暮らしへの不安を一緒に解消する方法を探りつつ、あとは親御さんに頑張ってもらうしかない部分もあるのです。決して無理はしなくて良いのです。
子どもの幸せを犠牲にして自分の安心を手に入れようとする関係は、もはや健全な親子関係とは言えません。このことにこの年齢になって初めて気づきました。自分自身の幸せも大切にしていいのです。そうしてください。同居を解消することは、自分の人生を取り戻すための大切な一歩です。親を尊重する気持ちは持ちつつも、充実した自分の生活を追求すること。それでいいのです。親が心を痛めていても、自分は趣味を堪能しても良いのです。罪悪感を感じる必要はないのです。
もし今、親との同居について悩んでいる方がいらっしゃったら、少し考えてみてください。あなたにとっての「しあわせな距離感」は、どのくらいですか?


コメント